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ドストエフスキー「悪霊」に見る、幸福の定義

2009年08月21日

ドストエフスキー「悪霊」に見る、幸福の定義
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日経ビジネスオンラインの記事に「人間が不幸なのは、自分が幸福であることを知らないから」というものがあった。

ドストエフスキーの著作は結構好きで、色々と読んだものだ。この悪霊も読んだ気がするのだが、内容を覚えていない。いや、これだけではなく他のドストエフスキーの著書も覚えていないのだから、雰囲気だけで読んで、内容は(難しくて?)頭に入らなかった…というべきなのだろう。

このコラムでは、「今の世の中は社会の方向感が定まりにくい世の中なので」と前置きした上で、

「何でもいい」のだから、何をやっても達成感も充実感もない。
「何でもいい」のだから、動機もやる気も持ちようがない。
「何でもいい」のだから、本気で判断はできない。
何をどう判断しても、重みがない。
だから、気持ちや行動の方向が定まらず、いつも不安定だ。

こうしてぼくらは、熱中できず、やる気が持てず、判断もできなくなってしまう。

とあった。なる程なぁ~と、思わず納得してしまった。
かつて、第二次世界大戦の時は戦争に勝つと言うために。高度成長期にあった日本は豊かになることを目指して働いた。そういった時代では逆に他の生き方(価値観)というのは許され難いものではあったのだが、何をしたらいいのかという事は明確に存在し、そこを目指すことで(その善悪はさておき)一体感があり、自分に迷いはなかったかと思う。

そういえば、ダイヤモンド・オンラインには中国での80后の話があった。
中国一人っ子政策の落とし子 劣化する新人類“80后”蔓延の深刻 | China Report 中国は今 | ダイヤモンド・オンラインで、ニート・無気力と化した1980年代生まれの状況がレポートされているが、その中に、

甘やかされた80年代生まれの一人っ子も問題だが、彼らをダメにしたのは経済成長一辺倒で来た中国という社会であり、それに踊らされた大人たちだ。


大学受験に向けてまっしぐらの学校教育は、「人間とはなんぞや?」「幸せとは何?」などを問う道徳哲学を歯牙にもかけない。小学校でも「道徳」の教科書は確かに配られるが、人間形成にはまったく役に立たない内容だ。

とあった。社会が向いている方向性は明確な中国。行き着く先は金で、その方向に向いてしまうと楽なのだろう。しかし、一つの方向に向いてしまうと、何も考えることができなくなるということでもあろう。

今の日本は物質的に裕福になり、精神的な束縛もなくなり、人は自由になった。
しかし、自由というのは何をしたらいいという規定さえも無くなった世界であり、何でもできる可能性を保持しつつ、やらなくてもいい世界。でも、だからこそ考えることだけはできる。延々と考えて、何を生み出すのかはそれぞれに問われる事なのだろう。

そういえば、これまた日経ビジネスオンラインにあった記事(だったと思うの)だが、人は何をしたらいいか…という所から出発して、生物学的には何を為すとか為さないというのはナンセンスという記事もあった。

結局のところ、どう生きたらいいのか…というのは人間が生きていく上での結論の無い命題で、自分自身で自分の結論を見つけるしかできない。

私自身は、昔ほど生に執着することはなくなったな…と思うのだが、ふと夜、寝る前に「ん?今、心臓が止まったら…」と考えると怖くなることがある。心臓が脈を打っていることは当たり前のことに思えるが、当たり前のことではなくって、いつ止まっても不思議ではない。
そしてそんな事を考えると、本当に心臓が止まりそうな気もして来てしまうし、夜はそんな事を考えてしまう時間でもある。

そこには、まだ、死ぬことは怖いと思う自分がいる。きっと、死んだら死んだで楽になるのだろうけど、獏とした不安感がある。
それはまだどこかに、生きたい。生きてしたい何かがあるから思うことなのだろう。
すると、生きている間は、生きていく目的があった方が楽であり、そのためにはドストエフスキーの悪霊の登場人物に倣って、理由を作り出してもいいし、羽生に倣って全てを初期化して判断してもいい。何にしても自分の中で目的が定まっているとそれはエネルギーになる。無から有を生み出すことが出来るのが人の良さということだろうか。

Posted by りじんぐ at 19:45

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2009年08月21日 19:45に投稿されたエントリーのページです。

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