« 音楽メディアの売り上げ変遷 | メイン | レンタルによる、販売業の圧迫(?) »

CDとp2pの密接な(?)関係

2010年01月25日

CDとp2pの密接な(?)関係

CDの販売でもっとも槍玉に挙げられる事柄として、p2p(Winny,Share)等による違法ダウンロードがあります。
あまりのダウンロード数に業を煮やしたのか、この1月1日よりダウンロード違法化法も施行されました。
違法ダウンロードにより、CDの販売は実際のところどれだけダメージを受けているのでしょうか?見ていきましょう。

cd_sales.jpg
先ず、今までと同じデータですが、CDの売上げについて、枚数及び金額の総合計をまとめてみました。
こちらのグラフでも1998年をピークに1999年は一気に3万5千枚減少しています。そしてその後は右肩下がりとなります。

では、p2pの代表格、Winnyの歴史を振り返ってみましょう。
1998年 mp3普及期へ
2002年 Winny世に出る

…あれ?世の中にWinnyが出る前にCDの売上げが減少しているって事でしょうか?

日本レコード協会の「ファイル交換ソフト利用調査 2002年度」によりますと、

2001年5月の調査では、ファイル交換ソフト利用者は約100万人で、2002年1月調査時点では約32万人弱減少したことになりますが、この主な要因は、「Napster」のサービス停止、昨年11月の「WinMX」ユーザーの刑事摘発報道による著作権意識の浸透等、であると考えられます。
とありますので、なるほど、当初はWinMXによるp2p利用が主だったということなんでしょうね。

では、その日本のp2p利用者人口を見てみましょう。こちらも日本レコード協会の資料によりますが、

200120022003200420052006
利用者数(万人)10068.498.694.9127.4175.5
なんで、グラフ作っていないか?って言うと、これがあてにならない統計だからなんです。
この統計では、2001~2006年まではアンケートによる利用者数割合に対して、日本のインターネット人口の利用者数をかけているのです。

2007年以降は、WinnyとShareに対して、ノード数調査を行い、実際のノード数の推定をしています。
そちらによりますと、

200720082009
Winny利用者数(万人)3019インデックスポイゾニングにより不明
Share利用者数(万人)222222
合計したところで、50万人そこそこでしょうか。必要な時だけ利用する人もいるため、これ以上の利用者数がいるかとは思いますが、先の統計と全く異なった数字になっています。日本レコード協会の意図とすると、犯人をp2pにしたいという意図があるのでしょうから、過大に算出する傾向があるのもうなずけますが、果たしてこの2001年~2006年の数字は信憑性があるのでしょうか?

ところで、先のWinMXは2008年にはどこに行ったのでしょう?
2008年は、Winny,Share以外に「Gnutella(Limewire、Cabos)等」の利用者数の調査もされています。
こちらは調査したノード数は77万件。うち、日本での利用者が2.26%という事は、日本での利用者は2万人程度しかいないということになります(2009年も同程度の利用者となります)。WinMXの名前は挙がってきませんので、もはや調査対象として相手にされていないということでしょう。

また、先の統計を信頼するとして、2001年から2002年にかけてp2p利用者は大幅に減少しています。この数字では30%減です。しかるに、CDの売上げ枚数・金額共に10%近い減少となっています。
また、その後のp2p利用者の増加を考えると、2006年には2002年の3倍近い利用者数になっています。しかし、売上げ枚数は10%減、売上げ金額は15%減と、p2p利用者に全ての責任を押し付けるには無理がありそうです。

ところで、総務省の情報通信サービスの加入・契約状況から、ブロードバンド加入者数の推移を見てみましょう。

bloadband.jpg
2008年現在の利用者数は3000万人程です。2000年の時点ではたったの86万人。それ以外のインターネット利用者がアナログ回線&テレほーだいで、ひたすらダウンロードしていた…と考えるのは適切でしょうか?
また、その後のブロードバンド利用者の増加率を考えると、ブロードバンドの普及率に反比例してCDの売上げが減っているとは考えにくいものとなります。

つまり、p2pによる売上げ減少は、そんなに悪者扱いされるほど大きな影響はないと思われます。

CDの売上げとp2pの関係については、別の切り口からITmediaモバイル:WinnyはCD売上を減らさず~慶應助教授の研究に迫るにて、慶應義塾大学経済学部助教授の田中辰雄氏が、WinnyではCDの売上げが減らしていないという研究を発表しています。

また、出口の見えないCD不況 本当の犯人は誰だ!!という記事をジャーナリストの烏賀陽 弘道氏が書いています。
どちらも、ご参照下さい。


ところで、カラオケ白書というものがあります。このカラオケ白書は全国カラオケ事業者協会による、カラオケの資料です。残念ながら、この資料は購入しないと中を見ることが出来ないため、ネットの海に漂着していた、カラオケ白書のデータを拾い集めて、カラオケ人口のグラフを作ってみました。

karaoke.jpg
これを見ると、カラオケ人口は1994年に頭打ちとなっていまして、その後は右肩下がりとなっています。
CDの売上げとカラオケは、親子・兄弟関係にあると思えるのですが、そのカラオケがCDの売上げに先んじて、下り坂になっています。

どうやら、そもそも音楽自体の危機であり、p2pやら何やらによりCDが買われなくなった…と言うよりも、音楽業界そのものがそっぽを向かれ始めているのでは?と考える方が良さそうな気がします。
その中の小さなパラメータとしてp2p等が存在するのではないかと思えてきます。

さて、なんだか、ほぼ方向性が出てしまった感もありますが、今後、CD不況の原因とWikipediaで指摘されているものをそれぞれ見ていき、何がCD不況の原因なのかを特定し、どうしたら良いのか考えていきたいと思います。

Posted by りじんぐ at 22:48

About

2010年01月25日 22:48に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「音楽メディアの売り上げ変遷」です。

次の投稿は「レンタルによる、販売業の圧迫(?)」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type