2010年01月26日
レンタルによる、販売業の圧迫(?)[ アニソン ]
日本レコード協会では、ライバル業のレンタル業についても調査をしています。しかし、ネット上に公開されている情報は断片的で、綺麗なグラフを作ることが出来ません。
一応、日本レコード協会の統計に基づき、店舗数とシングルとアルバムの在庫についてまとめてみました。
これによると、レンタル店は減少傾向にあり、扱っているCDの種類はアルバムが増えています。シングルは減少傾向にあります。これは、先に掲載した、シングル&アルバムの売上げ件数の傾向とは異なった動きを示しています。
特にアルバムは、実際の売上げ減に反比例した形となっているのが特徴的で、CDの売上げ減少分をレンタルが吸収していると言えなくもないと考えられます。
また、シングルについては、実際の売上げの減少率ほど、在庫の点数は減っていません。これは、過去の在庫を維持していて、極端に在庫を減らすということをしていないのかも知れません。
これら在庫量は、店舗面積による影響も受けますので、在庫を入れ替える必要性があるのかどうか(店舗面積がどうなのか)の観点からの分析も必要となりますので、店舗面積を見てみたいと思います。
しかし、店舗面積だけでは、店の傾向が分かるだけで、実際にレンタルがどれだけ利用されているか分かりません。そこで、別の方向からもデータを持ってきたいと思います。
JVA(JAPAN VIDEO SOFTWARE ASSOCIATION)による、ビデオレンタル店実態調査があります。詳細な結果は「ビデオレンタル店実態調査報告書」(有料)にあるそうなので、インターネット上で公開されている、概要版によりまとめてみました。
こちらはビデオ(VHS・DVD・Blu-ray)のレンタルの貸し出し本数であり、CDのレンタル調査ではないことにご留意ください。
日本レコード協会の店舗面積と、JVAのレンタル貸し出し本数をひとつにまとめると、
先のグラフと組み合わせて見てみると、レンタル店そのものは減少傾向にありますが、大型店に集約されていく事が見て取れます。また、一店舗あたりの貸出数は増加傾向にあります。実際の総貸出数は、店舗数×貸出数平均となりますが、こちらの統計では店舗数が分かりませんので、少々乱暴ですが、日本レコード協会の店舗数を利用したものと、JVAレンタルシステム加盟店数を利用したもので、実際の貸出数を計算してみると、
年 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総貸出数(百万枚):日本レコード協会店舗数 | 53 | 55 | --- | 54 | 53 | 59 | 62 | 69 |
総貸出数(百万枚):JVAレンタル加盟店数 | 94 | 107 | --- | 100 | 94 | 100 | 104 | 90 |
上記、日本レコード協会のレンタル店舗数を利用した、貸出総数は、2001年に対し、2009年は130%となっています。
貸出本数はビデオレンタルの回数という事を勘案しても、CDのレンタルに対しても同様の傾向があると考えられますので、レンタル利用回数が増加しているだろうということは推察できます。
また、この増加割合を考えると、CD売上げの不振はCDレンタルのせいだ!と言ってしまいたくなります。
しかし、JVAレンタルシステム加盟店数の店舗数を利用すると、レンタルにより実際に貸し出されるメディアの数はそんなに増減していない事が分かります。レンタルは一定のCD購買層を食いながらも、その影響範囲は変わらないのではないか?とも考えられる訳です。
総合的に考えるならば、「CDレンタルの利用率は上昇しつつある」と結論づけるのが無難でしょう。
しかし、CDレンタルは1980年から存在し、20年も経てば目新しい存在ではなくなっていること、また、CDを買っている層と、CDレンタルをしている層がどれだけ重なるのかを検討しないことには、影響の大きさが分かりません。
本来ならばこれらを分析すべきなのですが、レンタル開業以来~2000年までのデータが無いこと、ユーザー層の重なりを調査するにはアンケート等の方法しかないことから、資料不足として、CDレンタルの分析はこのあたりにしておきたいと思います。
尚、参考データとして2002年の日本レコード協会による「音楽コンテンツ個人録音及びそれに関わるCD‐R等の利用実態調査」のデータを挙げておきます。
こちらによると、標本数1000中、CD購入者率は53%、レンタルCD利用率は40%(複数回答)。また、レンタル利用者を更に詳細に分析すると、購入&レンタル利用者は(全体の)25%、レンタルのみ利用者は15%でした。別の見方をすると、CD購入・レンタル等を通じて音楽に関わった人は全体の77%あまりだっと言うことです。
また、半年間のCDアルバムの購入平均枚数は3.9枚、レンタルは6枚。CDシングルの購入平均枚数は2.6枚、レンタルは14.4枚でした。
一回こっきりのアンケートデータなのがもったいないですね。
・レンタルのみの層=購入に貢献していない層 → 購入に貢献することがあるのかどうか
・購入&レンタル層=CD購入が増減する可能性のある層 → CD不況下で、どこまで増加するのかどうか
・購入のみの層 =レンタルに影響されない層 → CD不況下でも頑張ってCDを買っているのかどうか
の推移を見てみたくなります。
それにしても、一昔前のデータですが、半年でCDを4枚購入、レンタルを6枚する…なんて、、、今では考えられないように思います。
もう一つ参考データを。2007年、文教大学情報学部 福島美里氏の社会調査ゼミナール研究報告 パソコンによる音楽利用の変化です。
アンケート調査を中心としたもので現在の方向性を探る参考になります。
標本数が129と少ないこと、大学3、4年生を中心とした層、サンプリング対象の講義受講者へのアンケート調査であることから、かなりの偏りがある可能性も否定できませんが、興味深い結果が見て取れます。
色々と面白いのですが、今までの流れで関係あるところを抽出しますと、新品CD購入率62%,CDレンタル利用率56.6%と、この二つが突出しています。尚、ダウンロード等は20%台でした。
また、CDの購入者数は77%もいまして、こんなに沢山の人が買っているんだ…と逆に驚いてしまいそうな高率です。
まだまだCD文化は見捨てたものではないかも知れませんね。